ダイバーシティマネジメントを成功させるには?管理職が実践すべき5つのポイントと研修活用法

ダイバーシティマネジメントとは、性別・国籍・年齢・障がいの有無などの多様性を組織の競争力に変える経営手法です。内閣官房が2022年に公表した「人的資本可視化指針」では、多様性が情報開示の主要7分野の一つに位置づけられ、企業にとって「対応すべき課題」から「開示が求められる経営指標」へと変わりつつあります。成功の鍵を握るのは現場の管理職であり、アンコンシャス・バイアスへの気づき、心理的安全性の確保、公平な評価の3つが実践の柱になります。本記事では、管理職が取り組むべき5つの実践と、経済産業省「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」に沿った定着5ステップ、効果測定の方法までを体系的に解説します。
「経営層からは人的資本経営やダイバーシティ推進を求められているが、現場の管理職がなかなか変わらない」「女性活躍推進や外国籍社員の活用を進めたいが、制度を整えても現場に浸透しない」——こうした板挟みに悩む人事担当者は少なくありません。
ダイバーシティマネジメントは、制度を整えるだけでは成果につながりにくく、現場で日々マネジメントを行う管理職の意識と行動が変わることで初めて機能します。この記事では、ダイバーシティマネジメントの定義と背景から、管理職が実践すべき5つのポイント、組織に定着させる5ステップ、効果測定の方法、そして研修の活用法までを解説します。
目次[非表示]
- 1.ダイバーシティマネジメントとは|ダイバーシティ推進との違い
- 2.ダイバーシティマネジメントが企業価値向上につながる理由
- 3.制度だけでは進まない|ダイバーシティ推進で起きやすい課題
- 3.1.「受け入れたのに活躍しない」が起こる理由
- 3.2.アンコンシャス・バイアスによる無意識の排除
- 3.3.その他の課題
- 4.無料ダウンロード|多様性を成果につなげるヒントを詳しく解説
- 5.ダイバーシティマネジメント成功の鍵は管理職にある
- 5.1.なぜ管理職が成果を左右するのか
- 5.2.管理職に求められる5つの実践
- 6.ダイバーシティマネジメントを組織に定着させる5ステップ
- 6.1.STEP1:現状を把握し、ポリシーとKPIを設定する
- 6.2.STEP2:経営層がコミットし、推進体制を築く
- 6.3.STEP3:制度・ルールを見直す
- 6.4.STEP4:管理職の行動・意識を変える
- 6.5.STEP5:従業員へ広げ、組織風土に統合する
- 7.ダイバーシティマネジメントの効果測定方法
- 8.よくある質問
- 9.株式会社パソナHRソリューションのダイバーシティ研修
- 10.まとめ
- 11.ダイバーシティマネジメントを成功に導く お役立ち資料
- 12.関連記事
ダイバーシティマネジメントとは|ダイバーシティ推進との違い
ここでは、ダイバーシティマネジメントの定義と、よく混同される「ダイバーシティ推進」との違いを整理します。ダイバーシティマネジメントとは、多様な人材の違いを経営資源として活かし、組織の成果やイノベーションにつなげるマネジメント手法のことです。
一方、ダイバーシティ推進は「多様な人材を受け入れる」ことに重点を置いた取り組みを指す場合が多く、女性管理職比率の目標設定や外国籍社員の採用拡大といった施策が中心になりがちです。ダイバーシティマネジメントは、受け入れた多様性を「どう活かすか」という経営視点まで踏み込む点に違いがあります。
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なぜ今ダイバーシティマネジメントが求められるのか
ダイバーシティマネジメントが注目される背景には、複数の社会的・制度的な変化があります。
ダイバーシティマネジメントが求められる背景
背景 | 概要 |
|---|---|
人材不足の深刻化 | 少子高齢化により労働力人口が減少し、多様な人材の活用が不可欠に |
女性活躍推進 | 女性活躍推進法の改正により、行動計画の策定や情報公表が義務化 |
外国籍社員の増加 | 外国人労働者数は過去最高を更新し続けており、職場の多国籍化が進行 |
シニア活用 | 70歳までの就業機会確保が努力義務化され、年齢の多様性への対応が必要に |
人的資本経営・開示への対応 | 人的資本可視化指針では、女性管理職比率・男女間賃金格差・男性育児休業取得率などが開示項目として例示されている |
※この表は横にスクロールできます。
特に人的資本開示(企業が人材に関する情報を投資家やステークホルダーに公開すること)の流れは、ダイバーシティを「やるべきこと」から「測定し、報告すべき経営指標」へと押し上げています。
ダイバーシティマネジメントが企業価値向上につながる理由
多様な人材を受け入れるだけでは、組織の成果に直結するとは限りません。ここでは、ダイバーシティが企業価値につながるメカニズムを解説します。
属性の多様性だけでは成果は生まれない
多様性には大きく2つの種類があります。
デモグラフィック・ダイバーシティ(表層的多様性) | 性別、年齢、国籍、障がいの有無など、外見や属性で分かる違い |
|---|---|
コグニティブ・ダイバーシティ(認知的多様性) | 思考スタイル、専門知識、経験、価値観など、内面的な違い |
研究では、表層的な多様性だけでは不十分であり、認知的多様性が高いチームほど複雑な問題解決が速いことが示されています。つまり、女性や外国籍社員の「人数」を増やすだけでは成果にはつながりにくく、異なる視点や考え方を意思決定に反映できる仕組みが必要です。
ダイバーシティを経営成果につなげる視点
McKinsey & Companyが2023年に公表した調査『Diversity Matters Even More』では、経営陣のジェンダー多様性が上位4分の1に入る企業は、下位4分の1の企業に比べて、同業他社の平均を上回る収益性を実現する可能性が39%高いと報告されています。ただし、この相関が成立するには条件があります。
組織が「学習志向」を持ち、異なる意見を統合する文化がある場合にのみ、多様性は業績向上に寄与するとされています。制度を整えるだけでなく、多様な意見を受け止め、活かすマネジメントの仕組みが不可欠です。
補足
ダイバーシティマネジメントの成果は「多様な人材を何人採用したか」ではなく、「多様な視点がどれだけ意思決定に反映されたか」で測ることが重要です。
制度だけでは進まない|ダイバーシティ推進で起きやすい課題
制度を整備しても現場で成果が出ない——その原因を理解することが、実効性のある施策の第一歩です。
「受け入れたのに活躍しない」が起こる理由
女性管理職候補を登用したものの期待した成果が出ない、外国籍社員を採用したが早期離職してしまう——こうした事態の背景には、受け入れ側の体制が整っていないケースが多く見られます。配属先の管理職が多様な部下のマネジメント方法を学んでいなければ、従来のやり方を押し付ける形になり、結果として「活躍できない環境」を作ってしまいます。
アンコンシャス・バイアスによる無意識の排除
アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、本人が意識しないまま持っている思い込みや先入観のことです。「育児中の女性は重要な仕事を任せられない」「若手は経験不足で判断できない」といった偏見が、個人の能力発揮を妨げ、離職率の上昇や組織の硬直化を招くことがあります。
その他の課題
制度を整えても、多様な人材が実際に力を発揮できるとは限りません。周囲の理解が伴わなければ、本人が遠慮したり、意見を出しにくいと感じたりします。だからこそ、社員同士が互いの背景を知る機会が必要です。ダイバーシティ研修は、社員一人一人が互いの違いを理解し、支え合える土台をつくります。
例えば、時短勤務の同僚がどのような事情を抱えているかを知れば、「早く帰る人」という表面的な受け止めは変わっていきます。互いの背景を知ることで、協力し合える関係につながるのです。さらに、多様な視点が交わる職場では、これまで気づかなかった発想が生まれやすくなります。同じような経歴の人だけでは出てこなかったアイデアが、異なる経験をもつ人の一言から動き出すこともあります。
- 世代・国籍・働き方の違いによるコミュニケーション課題
価値観や仕事の進め方が異なるメンバー間で、意思疎通がうまくいかないケースが発生しやすくなります。 - 心理的安全性の不足
少数派のメンバーが意見を言いにくい雰囲気があると、多様性を活かす以前に、チームとしての機能が低下します。 - 数値目標の達成が目的化
女性管理職比率などの数値を追うあまり、本来の目的である「多様な視点を活かした組織づくり」が見失われることがあります。
ダイバーシティマネジメント成功の鍵は管理職にある
ダイバーシティマネジメントの成否を分けるのは、現場で日々メンバーと向き合う管理職の行動です。ここでは、なぜ管理職が重要なのか、そして具体的に何を実践すべきかを解説します。
なぜ管理職が成果を左右するのか
経営層がどれほど優れた方針を打ち出しても、現場の管理職がその意図を理解し、行動に移さなければ組織は変わりません。管理職は、採用・配置・評価・育成のすべてに関わるポジションであり、メンバーが「この職場で力を発揮できる」と感じるかどうかは、直属の上司の言動に大きく左右されます。
管理職に求められる5つの実践
実践項目 | 具体的な行動 |
|---|---|
[1]目的を共通言語化する | 「なぜダイバーシティに取り組むのか」をチーム全体で共有し、経営方針と現場の業務をつなぐ言葉で説明する |
[2]アンコンシャス・バイアスに気づく | 自身の偏見を認識するためのトレーニングやケーススタディを通じた気づきの機会を持つ |
[3]心理的安全性を高める | Googleの「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの生産性を左右する最大の要因は心理的安全性であると結論づけられている。発言を歓迎する姿勢を日常的に示す |
[4]多様な価値観を活かした意思決定を行う | 会議で少数意見を意図的に引き出し、異なる視点を統合して結論を出すプロセスを設計する |
[5]公平な評価と育成を行う | 評価基準を事前に明確化し、直感ではなく事実に基づいて判断する仕組みを導入する。成長機会の配分にも偏りがないか定期的に確認する |
ワンポイント
5つの実践のうち、まず着手しやすいのは「[1]目的の共通言語化」です。チームミーティングで「なぜ取り組むのか」を5分間共有するだけでも、メンバーの受け止め方は変わります。
ダイバーシティマネジメントを組織に定着させる5ステップ
ダイバーシティマネジメントを組織に定着させるには、段階的なアプローチが効果的です。ここでは、経済産業省「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」(平成29年3月策定/平成30年6月改訂)が示す「実践のための7つのアクション」をもとに、企業が取り組むべき順序を5つのステップに整理して解説します。
出典:経済産業省「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」(平成29年3月策定/平成30年6月改訂)
STEP1:現状を把握し、ポリシーとKPIを設定する
まず、女性管理職比率や男女間賃金格差、男性育児休業取得率などの定量データに加え、従業員サーベイやヒアリングで現場の実態を把握します。同ガイドラインでは、ダイバーシティの現状を踏まえた数値目標を設定することが有効とされており、現状把握はKPI設定の前提にあたります。そのうえで、ダイバーシティを通じて中長期的にどのような企業価値向上を目指すのかという方針(ダイバーシティ・ポリシー)を明確にし、目標となるKPIと、その実現に必要なロードマップを策定します。(アクション1)
STEP2:経営層がコミットし、推進体制を築く
経営トップ自らがダイバーシティ・ポリシーとKPI・ロードマップにコミットし、社内に共有します。一過性の取り組みで終わらせないためには、経営トップが責任を持って実行と不断の見直しを進めることが欠かせません。あわせて、全社的・継続的に取り組みを進めるための推進体制を構築し、経営トップがその実行に責任を持つ形を整えます。(アクション1・2)
STEP3:制度・ルールを見直す
性別・国籍・年齢などの属性に関わらず誰もが活躍できるよう、従来の人事制度を見直します。年功序列的な仕組みなど特定の属性に有利な制度を改め、成果に基づいた評価・報酬体系へ移行することが基本的な方向性です。あわせて、テレワークやフレックス勤務といった柔軟な働き方の整備など、働き方改革も並行して進めます。(アクション4)
STEP4:管理職の行動・意識を変える
制度を整えても、現場で運用する管理職の意識と行動が変わらなければ成果にはつながりません。各部門の管理職に対して、経営戦略上のダイバーシティの意義について理解を促し、多様性を活かすマネジメントスキルを提供する研修を実施します。アンコンシャス・バイアスが評価やジョブアサインメントに与える影響への気づきを促す研修は、その代表的な取り組みです。また、一般論だけの研修では行動変容につながりにくいため、貴社の現場で実際に起きている事例(成功例・失敗例)を組み込むと効果が高まります。あわせて、管理職自身の評価指標や、部下の人事評価・ジョブアサインメントの基準にダイバーシティの要素を組み込むことで、実践を後押しする仕組みをつくります。(アクション5)
STEP5:従業員へ広げ、組織風土に統合する
管理職の変化を起点に、取り組みを従業員一人ひとりへと広げます。画一的なキャリアパスだけでなく、ライフスタイルや価値観の異なる人材が活躍できる多様なキャリアパスを整備し、従業員が自らのキャリアに主体性(キャリアオーナーシップ)を持てるよう支援します。ここまでの取り組みと成果を社内外に発信し、評価を受けながら継続していくことで、ダイバーシティは一時的な施策ではなく組織の風土として定着していきます。なお、STEP1で設定したKPIをどう測るかは、次のセクションで詳しく解説します。(アクション6・7)
ポイント
STEP4の「管理職の行動・意識を変える」は、対象を管理職に限定するという意味ではありません。同ガイドラインでも、管理職(アクション5)と従業員(アクション6)はいずれも現場の取り組みとして位置づけられています。全社で展開していく上で、まず管理職が共通認識を持つことにより、その後の従業員への浸透が進みやすくなります。
ダイバーシティマネジメントの効果測定方法
取り組みの成果を「見える化」することで、経営層への報告や次の施策の改善に活かせます。ここでは、測定すべき主要な指標を紹介します。
指標 | 測定方法 | 確認頻度の目安 |
|---|---|---|
エンゲージメント | 従業員サーベイで「職場の包摂性」「発言のしやすさ」を定点観測 | 半年〜年1回 |
離職率 | 属性別(性別・国籍・年齢層)の離職率を比較し、特定層に偏りがないか確認 | 四半期 |
女性管理職比率 | 全国平均13.1%(厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」)を基準に、貴社の目標値との差分を追跡 | 年1回 |
外国籍社員定着率 | 入社後1年・3年の定着率を日本人社員と比較 | 年1回 |
管理職行動変容 | 研修前後の360度フィードバックや、部下からの評価スコアの変化を測定 | 研修後3〜6カ月 |
効果測定で重要なのは、数値の「良し悪し」だけでなく、「なぜその数値になったのか」を現場の声と合わせて分析することです。定量データと定性データを組み合わせることで、次に打つべき施策が見えてきます。
よくある質問
Q. | ダイバーシティ推進とダイバーシティマネジメントの違いは? |
|---|---|
A. | ダイバーシティ推進は多様な人材の「受け入れ」に重点を置く取り組みです。ダイバーシティマネジメントは、受け入れた多様性を「経営成果に活かす」ところまで含むマネジメント手法を指します。 |
Q. | ダイバーシティ研修は誰から受講すべき? |
|---|---|
A. | まず管理職から受講することが効果的です。現場のマネジメントを担う管理職の意識と行動が変わることで、組織全体への波及効果が期待できます。 |
Q. | 管理職が反発する場合はどうすればよい? |
|---|---|
A. | 「なぜ取り組むのか」という目的を経営課題と結びつけて説明し、管理職自身のマネジメント力向上につながることを伝えましょう。一方的な押し付けではなく、対話の場を設けることが重要です。 |
Q. | 効果測定は何を見ればよい? |
|---|---|
A. | エンゲージメントスコア、属性別離職率、女性管理職比率、管理職の行動変容(360度フィードバック)などを組み合わせて測定しましょう。 |
Q. | 外国籍社員が少なくても取り組む必要がある? |
|---|---|
A. | ダイバーシティマネジメントは国籍だけでなく、性別・年齢・働き方・価値観など幅広い多様性を対象とします。外国籍社員が少ない組織でも、認知的多様性を活かす取り組みは組織力の向上につながります。 |
株式会社パソナHRソリューションのダイバーシティ研修
ダイバーシティマネジメントを現場に定着させるには、管理職の意識変革と行動変容を促す研修の活用が効果的です。
株式会社パソナHRソリューションでは、ダイバーシティに関する研修プログラムを体系的に提供しています。女性活躍推進、アンコンシャス・バイアス対策、外国籍社員の受け入れ体制構築など、貴社の課題に合わせたカスタマイズが可能です。
特に『女性活躍推進研修 女性社員のマネジメント(上司向け)』は、活躍を期待されている女性部下を抱える管理職に向けて、ダイバーシティとアンコンシャス・バイアスを踏まえたうえで、女性部下を活かすマネジメントの知識と考え方を具体的に扱うプログラムです。「制度は整えたが、管理職の意識が変わらない」という課題を抱える企業さまに多くご活用いただいています。
また、『ダイバーシティマネジメント研修』では、一人一人の価値観や背景の違いを理解し、チームの力に変えるための実践的な考え方を学ぶことができます。『階層別研修』と組み合わせることで、管理職だけでなく全階層に一貫したメッセージを届ける研修体系の構築も可能です。
まとめ
この記事では、ダイバーシティマネジメントについて以下の内容を解説しました。
- ダイバーシティマネジメントの定義と、「推進」との違い、そして今求められる背景
- 管理職が実践すべき5つのポイント(目的の共通言語化・バイアスへの気づき・心理的安全性・多様な意思決定・公平な評価)
- 組織に定着させる5ステップと効果測定の方法
ダイバーシティマネジメントは、制度を整えるだけでは成果につながりません。現場の管理職が多様性を活かすマネジメントを実践し、その行動変容を組織として支援する仕組みが不可欠です。全社で取り組みを進めるうえでは、まず管理職向けの研修から着手し、そこで得られた共通認識を従業員へと広げていく順序が、組織全体への浸透を早めます。
外部のプロフェッショナルの知見を活用するのも一案です。『株式会社パソナHRソリューション』では、8,000社以上の研修実績と600名を超える経験豊富な講師陣を活かし、貴社の経営課題に合わせたダイバーシティ研修を個別設計しています。ダイバーシティマネジメントの推進をお考えでしたら、ぜひ株式会社パソナHRソリューションにご相談ください。
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