なぜ今、OJTがうまくいかないのか|「現場任せ」の限界と企業が取るべき対策

OJT(On-the-Job Training)は、多くの企業で新入社員育成の中心として取り入れられてきた実践的な育成手法です。
しかし、OJTが「うまくいかない」と感じている企業は年々増えています。その主な理由は、従来のように「現場任せ」で運用するだけでは、育成が機能しなくなっているためです。
- 指導者によって育成成果に差が出る
- 現場の負担が大きい
- 新入社員が育たない
こうした課題の背景には、働き方や組織環境の変化があります。育成を個人の経験や善意だけに委ねず、組織として支える仕組みづくりが求められています。この記事では、「なぜOJTがうまくいかないのか」「企業が取るべき対策は何か」を分かりやすく解説します。
OJTが機能しにくくなっている背景とは
OJTは長らく「現場に任せるもの」とされ、指導者の経験や職場文化の中で運用されてきました。しかし現在では、業務と育成を同時に進める負荷が高まる中で、“育成の土台となる考え方”や“育成計画”が十分に整っていないと、指導が属人化しやすくなります。その結果、指導者は「どこまで教えるべきか」「どのようにフィードバックすべきか」を手探りで抱え込み、育成の質にもばらつきが生じやすくなっています。
OJTを機能させるために必要な考え方
今、必要なことは「OJTを実施しているかどうか」ではなく、指導者の育成に対する共通認識や進め方をどのように整え、「OJTを成立させていくか」という視点です。指導の基本ステップを共有できる形で整理し、育成プラン(育成計画書)やフィードバックの設計を通じて、指導者が“ばらつきなく”新入社員を支援できる状態を整える――OJTを“個人の力量”に委ねるのではなく、誰が関わっても同じ方向を向ける育成の枠組みとして捉え直すことが、育成の再現性を高める第一歩になります。
OJTの課題は「新入社員」ではなく「育成を支える側」
こうした状況は、特定の職場や担当者に限った話ではありません。外部調査を見ても、OJTに対する課題意識は多くの企業で共有されていることが分かります。実際、厚生労働省が実施した「令和6年度 能力開発基本調査」によると、61.1%の事業所が計画的なOJTを実施している一方で、人材育成や能力開発について「何らかの問題がある」と回答した事業所は79.9%に上っています。つまり、多くの企業がOJTを実施しているものの、その進め方や育成効果に課題を感じていることが分かります。
さらに、労働政策研究・研修機構(JILPT)の「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査(企業調査)」でも、人材育成・能力開発に関する課題として、「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間が取れない」といった、指導者側・育成環境に起因する要因が多く挙げられています。
これらの結果から見えてくるのは、課題の原因が新入社員本人の資質や意欲だけではなく、OJTを支える側の体制や環境にあるということです。多くの現場で「育成の重要性」は理解されているものの、指導にかける時間や人材の確保が難しく、育成を安定して機能させるための前提や共通認識まで整備しきれていない実態が、公的調査からも読み取れます。
その結果、教える側は「丁寧に育てたい」という思いがあっても、「どこまで踏み込んでよいのか」「どのように伝えるべきか」と迷いやすくなり、指導に慎重になりがちです。こうした状況の中で、従来型の“現場任せ”のOJTをそのまま続けることが難しくなってきているのです。
OJTは「難しくなった」のではなく「成立条件が変わった」
ここで重要なのは、OJTが「難しくなった」というより、そもそも教える人が不足している、教える人がその都度変わる、指導する側も自分の仕事を抱えていて忙しく、指導に専念できないなど、「OJTをOJTとして成立させるための条件が変化している」と捉える視点です。働き方や育成環境が変わっているにも関わらず、仕組みや支援のあり方が従来のままであれば、そのギャップによってOJTが機能しづらくなってしまいます。
「やっているのに育たない」OJTが機能しないことで起きる3つのデメリット
OJTの課題は、一見すると「指導者の負担が大きい」という問題に見えます。しかし実際には、育成の質や組織全体にも影響を及ぼす、広い課題につながっています。特に、人事・教育担当者が見落としやすいのが“目に見えない損失”の存在です。
成長のばらつきが組織内に固定化される
OJTは担当する指導者によって教え方や求める水準・声のかけ方に差が出やすく、同じ新入社員でも成長スピードにばらつきが生まれやすくなります。その結果、「伸びる新人」「伸びにくい新人」といった印象が早い段階で固定化されやすく、本人の自信や挑戦意欲に影響を与えてしまうことがあります。
指導者が疲弊し、育成が“負担”として認識される
限られた時間の中で育成を担う状況では、指導者が「育成=業務負担が増えるもの」「育成=評価されにくいもの」と感じやすくなります。そうした状態が続くと、育成に対する主体性や関わる意識が低下し、結果としてOJTの質にもばらつきが生じやすくなります。
新入社員側が相談しづらい状態に陥りやすい
OJTが属人的になると、新入社員は「質問すると迷惑かもしれない」「これくらいは自分でやるべきかもしれない」と感じやすくなります。その結果、分からないことや不安、判断に迷っていることを一人で抱え込みやすくなってしまいます。これは新入社員の能力や意欲の問題ではなく、関わり方が個人任せになっている育成環境によって生まれやすい状況だといえます。
- 関連する研修サービス
今、求められているのは「OJTを成立させるための仕組み」
このような状況に対して、多くの企業が「OJTのやり方を改善しなければならない」と考えています。もちろん、それも必要ですが、本質的には、OJTを「個人の経験則」に任せるのではなく、「育成を支える共通の土台」として整えることが重要になります。実際、多くの現場では、OJT指導者によって関わり方や指導内容にばらつきが生じやすい、という共通した課題が多く見られます。
こうした課題を踏まえ、パソナHRソリューションでは、OJTを単なる「教え方のテクニック」として捉えるのではなく、指導者がどのような姿勢で関わり、どのような視点を持つかを、育成における重要な要素として位置づけています。そのため、指導者一人一人の感覚に委ねるのではなく、後輩の育成プランを考えること、伝え方やフィードバックの方法を言語化すること、自身の指導を客観的に振り返ることを通じて、自らの関わり方を見直していくプロセスを重視しています。
このような視点からOJTを捉え直すことで、「なぜ教えているのに育たないのか」「なぜ指導が手探りになってしまうのか」といった現場の違和感を、指導者や個人の問題ではなく、OJTの前提や仕組みに関する課題として整理することができるようになります。
まとめ
この記事では、OJTがうまく機能しにくくなっている背景について、以下の内容を解説しました。
- 育成の質や進め方に課題(現場任せで育成が属人化)を感じている企業が増えている
- 新入社員本人が原因ではなく、指導者側の負担の大きさや育成環境の変化にある
- OJTを機能させるには、共通認識や育成計画など“成立させるための仕組み”を整える視点が重要
OJTが機能しにくくなっている背景には、時間的制約や指導人材の不足、育成に対する考え方の変化など、現場を取り巻く環境の変化があります。だからこそ、OJTを個人の経験や善意だけに委ねるのではなく、組織として育成を支える仕組みや共通認識を整えていくことが重要です。今の現場に合った育成の前提や関わり方を見直すことが、OJTを安定して機能させる第一歩となります。
『株式会社パソナHRソリューション』では、「OJT指導者研修」をはじめ、「新入社員研修」「ビジネスコミュニケーション研修」など、企業の人材育成課題に応じた幅広い研修をご提供しています。また、8,000社以上の研修実績で培ってきたノウハウを活かし、企業課題に応じて最適な研修をカスタマイズしてご提案することが可能ですOJTの進め方や育成体制に課題を感じている企業さまは、この機会にぜひ株式会社パソナHRソリューションにお問い合わせください。
▼この記事に関する研修サービス




