カスタマーハラスメントとは?企業がまず押さえるべき基本情報

店舗やサービスの現場で顧客からの理不尽な要求や暴言に直面し、従業員が精神的・肉体的に追い込まれることがあります。こうした状況は職場環境を悪化させ、離職や生産性の低下を招き、企業に深刻な影響を与えかねません。そして、なかには「カスタマーハラスメントにうまく対処できない」と、従業員の安全と健康維持、職場の環境維持に関する課題を抱える企業もあります。
この記事では、カスタマーハラスメントとは何かを整理し、企業や従業員に与える影響、そして実務で機能する対策の全体設計について解説します。
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カスタマーハラスメントとは
カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先といった事業活動に関わる者が優越的な立場を利用して、従業員に対して行う不当な要求や言動のことです。
厚生労働省は2022年に『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』を示し、顧客や取引先からの過度な要求・威圧的な言動は従業員の人権侵害となり得ると定義しています。
▼過去3年間のハラスメント該当件数の傾向(ハラスメントの種類別)

画像引用元:厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』
カスタマーハラスメントは一部の業種に限らず、接客やサービス業を中心に幅広く発生しており、近年は社会問題として認識されています。顧客対応の現場に立つ従業員を守るため、企業として理解と対策を進める必要があります。
出典:厚生労働省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』
具体的な行為例
カスタマーハラスメントに該当する代表的な行為は以下のとおりです。
- 暴言や威圧的な態度
- 土下座などの過剰な謝罪要求
- 長時間の拘束や不当な居座り
- 金銭や特別待遇の強要
- SNSでの不当な拡散や誹謗中傷
これらは従業員の尊厳を傷つけるだけでなく、企業全体の業務遂行や社会的信用にも悪影響を及ぼします。
カスタマーハラスメントが企業・従業員に与える影響
カスタマーハラスメントは現場の従業員だけでなく、企業全体にも深刻な影響を及ぼします。
従業員のメンタル不調・離職
理不尽な言動や要求にさらされた場合、従業員は強いストレスと精神的な負担を感じ、メンタル不調を引き起こすことがあります。このとき、企業が従業員を守ってくれないと感じると離職につながり、優秀な人材の損失を招きます。
職場のモチベーション低下
被害を受けた従業員だけでなく周囲の同僚も、「次は自分の番かもしれない」という不安や、不当な対応をせざるを得ない無力さを感じます。これにより、職場全体の士気やモチベーションが低下し、業務の質に悪影響が及ぶ可能性があります。
生産性・顧客体験の悪化
カスタマーハラスメントへの対応は長時間に及ぶことが多く、本来の業務から従業員を切り離します。その結果、業務の生産性や他の顧客へのサービス品質が低下し、全体の顧客体験に悪影響をもたらします。
企業イメージの低下
カスタマーハラスメントへの不適切な対応や、従業員が被害にあっている状況が公になると、「従業員を大切にしない企業」というネガティブな企業イメージが広がる可能性があります。また、企業には従業員を保護する義務があり、カスタマーハラスメントに対する適切な対策を怠ると法的責任を問われる可能性もあります。 既存顧客からの信頼を損なうだけでなく、法的リスクを伴うケースや、さらに採用活動にも影響を及ぼし、優秀な人材の確保が難しくなる要因となります。
実務で機能するカスタマーハラスメント対策の全体設計
カスタマーハラスメント対策は、単なるマニュアルの作成にとどまらず、組織全体で取り組むべき多角的な活動です。ルール作りから教育、事後ケアまで一貫した体制が求められます。
基本方針・ルール・フローの整備
まず「顧客対応における基本方針」を明文化し、具体的な対応フローを整備することが重要です。どのような行為を不当とみなし、どのように対応を進めるのかを明確にすることで、従業員が安心して業務にあたれます。
現場対応(一次対応)の要点
ハラスメント行為に直面した従業員が、安全に対応するための現場対応(一次対応)の要点を定めます。一般的には以下の流れが基本です。
- 従業員や顧客の安全確保
- 要求内容の妥当性評価
- 不当行為の指摘と中止要請
- 必要に応じて対応打ち切り、警察や弁護士との連携
これらをマニュアル化することで、現場の負担を軽減し、組織として一貫性のある対応を実現できます。
教育・研修・訓練
マニュアルを整えた上でカスタマーハラスメント対策を行うには、従業員教育が不可欠です。法的知識や社内ルールの理解に加え、ケーススタディやロールプレイを通じて実践力を養うことが求められます。
特に研修は、従業員の安全配慮義務の観点から必要です。従業員一人一人のカスタマーハラスメントへの対応力を高めることは、従業員の安心感を支えるだけでなく、企業価値の向上にも直結します。
事後ケア・再発防止
ハラスメント対応が終了した後は、被害を受けた従業員に対する事後ケアを徹底します。カウンセリングや休職制度の利用促進が一般的です。また、発生した事例を分析し対応フローや教育内容に反映させることで、再発防止に向けた取り組みを継続します。
外部研修でカスタマーハラスメント対策を強化しよう
自社でカスタマーハラスメント対策の実践的な対応訓練を実施するには、専門的な知識とノウハウが必要です。しかし、内製化では知識・ノウハウの不足により、カスタマーハラスメント対策を講じるのが容易ではない場合もあります。実効性のあるカスタマーハラスメント対策を進めるには、外部の専門的な研修を活用するのも一案です。
株式会社パソナHRソリューションでは『[実践型]カスタマーハラスメント対応力養成研修』を提供しています。この研修では、カスタマーハラスメントの基礎知識と対応方法のイロハを学びながら、現場で発生しやすい事例を題材にしたロールプレイングやケーススタディを通じて従業員の対応力を実践的に強化します。また、メンタルヘルスケアの観点も含め、企業全体で持続可能なカスタマーハラスメント対策を構築する支援を行っています。
従業員のメンタルヘルスを守り、企業価値を高めるためのカスタマーハラスメント対策強化に、弊社の研修サービスをぜひご活用ください。
まとめ
この記事では、カスタマーハラスメントについて以下の内容を解説しました。
- カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先といった事業活動に関わる者が優越的な立場を利用して、従業員に対して行う不当な要求や言動のこと
- カスタマーハラスメントは現場の従業員だけでなく、企業全体にも深刻な影響を及ぼす
- カスタマーハラスメント対策を講じる場合、ルール作りから教育、事後ケアまで一貫した体制が求められる
カスタマーハラスメントは従業員の心身を脅かし、企業全体に深刻な影響を与える問題です。発生を防ぎ、被害を最小限に抑えるには、基本方針の整備、現場対応の標準化、教育・研修、事後ケアを組み合わせた継続的な教育と社内体制づくりが欠かせません。外部の専門的な研修の活用も視野に入れながら、実効性のあるカスタマーハラスメント対策を講じましょう。
『株式会社パソナHRソリューション』では、カスタマーハラスメントやコミュニケーション、グローバル、マネジメントなど、企業の多様化するニーズにお応えできる充実の研修ラインナップをご用意しております。600名を超える経験豊富な講師陣を揃えており、幅広い分野の研修に対応できます。また、8,000社以上の研修実績で培ってきたノウハウを活かし、企業課題に応じて最適な研修をカスタマイズしてご提案することが可能です。カスタマーハラスメント研修の実施を検討している、または課題を抱えている企業さまは、この機会にぜひ株式会社パソナHRソリューションにお問い合わせください。


