
本社所在地:東京都新宿区西新宿6丁目22-1 新宿スクエアタワー5階
設立:昭和21年(1946年)6月5日
代表:代表取締役社長 池田茂
業種:寝具福祉用具製造・レンタル卸
従業員数:1,432名(2025年3月31日現在)
部署・役職名:人事部 人材開発室長 兼 ダイバーシティ推進課長
ご担当者氏名:中村 太一様
(取材日:2025年9月)
エンゲージメントサーベイの結果、組織風土に関する課題が顕在化。100年企業を目指す中で、全社で組織風土改革が急務と判断し、全社的な取り組みが始まった。
エンゲージメント調査から研修設計・実施までのワンストップソリューションと伴走型支援の姿勢が決め手。現場で実践できる行動変容を重視したチームビルディング研修を導入。
研修後、管理職の行動変容が顕著に現れ、若手の発言機会や挑戦意欲が向上。組織風土スコアは約10Pt改善。今後は次世代リーダー育成とDEI推進を軸に、100年企業に向けた継続的な改革を進めていく。
1949年の創業以来、一般家庭用ベッドや寝具のトップメーカーとして、また近年では福祉用具レンタル事業も事業の柱として成長を続けるフランスベッド株式会社。時代の変化とともに事業領域を拡大しながら常に人々の暮らしを支えてきた同社が、近年注力しているのが「組織風土改革」です。エンゲージメントサーベイの結果を踏まえ、パソナHRソリューションのチームビルディング研修を導入し、のべ500名近くが受講しています。その結果、組織風土のスコアが大幅に改善しました。
今回、人事部 人材開発室長 兼 ダイバーシティ推進課長の中村太一様に、研修導入の背景から成果までお話を伺いました。
中村氏:1949年、創業者である池田実が東京都三鷹市に「双葉製作所」という社名で会社を立ち上げたのが、当社の歴史の始まりです。創業当初はバイクのシートの中にある小さなバネを作る工場でした。そのバネ作りの技術を応用し、1956年に日本初の分割ベッドを発売しました。これが大ヒットし、社内公募で決まった商品名「フランスベッド」が、社名の由来です。
現在は、1983年に現社長の池田茂が立ち上げた福祉用具のレンタルビジネスが事業の柱の一つになっています。介護保険制度が2000年から導入されましたが、その17年前から福祉用具、特に介護用ベッドのレンタルに着想を得て、このビジネスを始めました。
創業から76年目になりますが、現在は一般家庭用ベッド部門と、福祉用具のレンタル部門、法人や病院向け部門の3つの柱で事業を展開しています。

中村氏:きっかけは、パソナグループのエンゲージメントサーベイを実施したことでした。サーベイを実施した背景は、人的資本経営はもちろん意識しましたが、それ以上に100年企業を目指すために将来的に若手・中堅が活躍する会社として、今のうちから何かやっておかないと間に合わないという本質的な危機感が人事部の中にあったからです。そのため多角的な視点で会社の課題を抽出したいと判断し、全社的な「健康診断」としてエンゲージメント調査を行いました。これは当社にとって初めての全社的な調査だったのですが、その結果が想定していた以上に課題が多く、衝撃を受けました。特に組織風土のスコアが総合的に低く、「言いたいことが言えない」「褒められていない」「新しい挑戦ができない」といった深刻な状況が浮き彫りになりました。
また、年齢層や階層による意識のギャップも大きな課題でした。管理職層が感じている状況と、現場の実感との間にズレがあることが浮き彫りになったのです。特に20代から30代前半の社員において「今後もこの会社で働きたい」というスコアが低く、将来的に若手や中堅層の定着や活躍が期待できず、企業の存続や価値の向上も実現しないという危機感がありました。このままでは、いくら製品やサービスが優れていても、時代の変化に対応できなくなってしまいます。これからも100年企業としての持続的な成長を目指すにあたり、今のタイミングで組織風土に真剣に向き合うことが不可欠だと考えました。
中村氏:その通りです。お互いが褒め合える、言いたいことが言える、新しいことに挑戦できる風土を作り、働く幸せを向上させることを目指し、取り組みを始めました。特に大きかったのは、経営層がこの結果を「現場任せにしてはいけない」と強く受け止めたことです。この経営層のコミットメントがあったからこそ、風土改革を人事部だけのテーマではなく、全社で時間をかけて取り組むべき課題としてスタートできました。

中村氏:一番大きな理由は、「一貫性」です。パソナグループとして、エンゲージメントサーベイの設計・分析から、その結果を踏まえた研修設計・実施までをワンストップで担っていただける点が大きな安心材料でした。
調査と研修が別会社の場合、データの連携や示唆の活用に断絶が生まれがちですが、パソナグループ会社間での連携でパソナHRソリューションなら打ち手までワンストップで提供いただけると考え、トータルでお願いしようと決めました。
さらに、「一緒に風土を変えていきましょう」という「伴走型」の姿勢、「本当にこのままでいいですか?何か変えましょうか?」と人事部の一員となって悩み、常にフォロー、提案してくれる姿勢にも感銘を受けました。単発で終わらせない前提で議論ができることが、私たちの課題意識と合致していたのです。
中村氏:エンゲージメントサーベイの指標や現場の実情を踏まえて「どの行動を増やすか・減らすか」まで噛み砕き、改善サイクルの回し方まで示していただけました。常にエンゲージメントスコアを頭に入れていただいているので、エンゲージメントサーベイと研修が一体化していることも実感できました。また講師も、理論だけでなく実際に経営者として現場で実践されている方でした。この実践性が、受講者の腹落ちにつながったと感じています。ご自身が会社を経営し、現場にも足を運び、メンバーへの声かけを実践しながら成果を出されている本物の経験者だと感じました。
中村氏:無意識の思い込みを自覚し、心理的安全性を高め、チームとして成果を上げるための具体行動を身につける狙いで、チームビルディング研修を実施しました。よくある体験型だけで終わらないよう、現場に持ち帰れる方法を重視した設計になっています。また、「アンコンシャスバイアス」についても取り上げました。無意識の思い込みがいかにチームワークを阻害するかを、具体的な事例とともに考えました。組織風土を変えるには、まずトップの意識改革からと考え、まずは経営層から実施し、現在は下の階層にまで展開しているところです。
中村氏:受講者のアンケート回答の中にもありましたが、講師の言葉で印象的だったキーワードが二つありました。ひとつは、「人間は環境動物」だという言葉です。良い環境にいれば良い行動を真似し、良くない環境にいると悪い行動を真似してしまうという考え方です。
もうひとつは、「言葉に出さないと分からない」という言語化の重要性でした。「よくやっている」「頑張っている」と思っていても、それは口に出さなければ伝わりません。言われてみれば当たり前のことですが、「分かっているだろう」と疎かになりがちなことでもあります。
中村氏:まず大きな変化は、管理職の行動に現れました。たとえば、会議では従来、上司が先に結論を示してしまうことが多く、部下の発言機会が限られていました。しかし研修を受けた管理職は意識的に発言を控え、若手や中堅に議論を任せるようになりました。結果、会議での発言量が増え、活発な議論が生まれるようになっています。これはもちろん管理職の役割放棄ではなく、「任せる」という行動が部下の主体性を引き出すことを学んだからです。
また、「結果だけでなくプロセスを褒める」という行動も広がりました。以前は成果に直結しなければ評価されにくい風土でしたが、小さな努力や工夫を認める姿勢が見られるようになったのです。これは心理的安全性を高め、挑戦を後押しする文化につながっています。
中村氏:はい。エンゲージメントサーベイの「組織風土」に関する肯定回答率は、1回目は43.2%でしたが、研修を実施したことで2回目は51.1%に上がり、3回目には53.2%まで上がりました。約1年半で、組織風土のスコアが10ポイントも上がったことになります。10ポイントというのは簡単に動かせる数値ではありません。現場での行動変容が積み重なった結果といえます。
さらに、研修を受けた管理職の80%以上が「自分の部下や同僚にも受けさせたい」と回答しており、受講者満足度の高さも裏付けられています。上層部からバトンリレーのように受け渡される形で、のべ500名ほどが受講しています。規模としても全社的な広がりを持った取り組みになっていることが、成果の大きな特徴です。
中村氏:事例の「横展開」を強く意識しました。研修の場で得た学びを各自の職場で実践したことによる成功体験をアンケートで収集し、それを社内メールマガジンなどで共有したのです。身近なエピソードを広めることによって実践の意欲が伝播し、良い行動が連鎖していきました。研修をやって終わりではなく、その後の地道な継続が風土改革につながると信じています。
中村氏:まず強調したいのは、講師の質の高さです。理論を語るだけではなく、ご自身のマネジメント経験を踏まえた話が多く、非常に説得力がありました。単なる知識の伝達ではなく「現場でどう行動するか」をイメージできる言葉が多かったので、受講者の腹落ち度合いが違ったと思います。研修の内容も、抽象的な概念を扱うだけではなく、必ずワークを通じて自分の言葉に落とし込む構成になっていました。受講者が「明日からこう動こう」と具体的にイメージできた点がとても良かったと思います。

中村氏:導入前の印象通り、しっかりと伴走してくださっています。常に「何か改善できることはないか」とフォローや指摘をいただき、非常に頼りにしています。研修後の受講効果を測定するアンケートを実施されている点も、他の研修会社にはない強みだと感じています。研修を「やりっぱなし」にせず、導入効果や実践の成功事例を汲み取るノウハウを持つことは、他の研修会社にはないアドバンテージだと思います。
中村氏:当社は「100年企業」を目指しています。創業から75年以上の歴史がありますが、ここから先の25年をどう過ごすかが非常に重要です。そのためには、時代に合わせて事業を変化させるだけでなく、社員が安心して力を発揮できる環境をつくり続けることが欠かせません。その中で、特に重視しているテーマは大きく2つあります。
ひとつは「次世代リーダーの育成」です。100年企業としてこれからも成長し価値を提供していくには、現在の管理職層だけでなく、その下の世代が主体的に動けるようにすることが不可欠です。研修で「任せることの大切さ」を学んだように、若手を信じて場を与えることが、リーダー育成につながると考えています。もうひとつは、「ダイバーシティ推進」です。女性管理職の登用や、多様なバックグラウンドを持つ人材の活躍を後押しすることが、これからの競争力の源泉になると考えています。
中村氏:ダイバーシティ、健康経営、人的資本経営など、多面的に人材育成を捉えて、これからもさまざまなノウハウを提供していただきたいと思います。今後も、いろいろな課題が出てくるかと思いますが、伴走者として支援していただけると助かります。
中村氏:課題は企業ごとに異なると思いますが、何かを変えたい、改善したいという答えやヒントは、おそらく社内に落ちていると思います。そして、課題を解決していくには、大きなことを一度に目指すよりも、小さい成功事例を横展開していくことが大切です。小さい手応えや手がかりができたら、それをいかに横展開して継続するか、途中でやめないかという事務局や人事部の忍耐力、継続力が試されているのだろうと思います。人材育成をより一層強化し、社員が安心して挑戦できる環境を整えることで、企業としての成長を支え「100年企業」としての責任を果たしていきたいと考えています。