【インバウンド対応研修導入事例】
東京国際空港ターミナル株式会社
日本空港ビルデング株式会社

インバウンド対応力のさらなる向上により世界No.1の空港を目指す

東京国際空港ターミナル株式会社

本社所在地:東京都大田区羽田空港2-6-5
設立:2006年6月20日
代表:代表取締役社長 赤堀正俊
業種:空港施設・航空関連サービス
従業員数:66名(2025年6月26日現在)
ご担当者氏名:営業部長 林様、営業部 小石峯様

日本空港ビルデング株式会社

本社所在地:東京都大田区羽田空港3-3-2 第1旅客ターミナルビル
設立:2006年6月20日
代表:代表取締役社長 田中一仁
業種:空港施設・航空関連サービス
従業員数:314名 (2025年3月31日現在)
ご担当者氏名:運営本部 山本様、古藤様

(取材日:2017年2月)

背景・課題

訪日外国人の増加に伴い、語学力・異文化理解・接遇力の不足が課題。個人研修では効果測定や組織展開が困難で、体系的な育成制度が必要と判断。        

検討プロセスと施策

2010年以降6年間、パソナHRソリューションと連携し現場ニーズを分析。全館統一おもてなしセミナー(2時間)、多言語対応研修(英・中・韓・日本語)、店舗訪問型英語指導、研修運営支援システム導入により効率化を図った。

成果と今後の取り組み

世界最高水準の5スター獲得継続、SKYTRAXランキング位向上、褒詞率・CS評価の向上が実現。店舗間ネットワークや意識共通化も進展。今後は個別マンツーマン指導や現場即応体制強化、「WE ARE TOKYO」ブランディング展開へ。

外国人旅行客が日本に期待することの一つが「おもてなし」。年間約8,000万人が利用している羽田空港は、海外と日本を結ぶ玄関口であり、高いCS品質が求められる最前線の現場です。その重要な役割を認識し、お客さま目線に立った改善を積み重ねた結果、英国SKYTRAX社の「Global Airport Ranking」で3年連続、世界最高水準の「5スターエアポート」を獲得しています。今回は、東京国際空港ターミナル株式会社(TIAT)営業部長の林様と営業部の小石峯様、現場での研修運営に携わる日本空港ビルデング株式会社運営本部の山本様と古藤様にお話を伺いました。

日本の接客の土台である「おもてなし」の水準を人材育成によって高めていく

研修導入の背景ついてお聞かせください。

林氏:海外からのお客さまは、日本のおもてなしに大変な期待をされていらっしゃいます。

そして国際空港は、そんな皆さまをお迎えする最初の到着地であり、最後の出発地でもあります。皆さまの期待に応えられる高い水準のサービスを提供することは、国際空港で働く私たちにとって重要な責務であると考えています。2010年の開業以降、TIATでは外国人旅行客の利用率がどんどん高まっており、多言語や異文化理解など、これまでの日本の接客の枠組みに収まらない課題も増えています。2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、今後ますます海外からのお客さまは増えるでしょう。

日本のおもてなしはこれまでも優れていましたが、もう一歩進んで、海外のお客さまのニーズや状況に合わせることができれば、さらに素晴らしいものになるのではないでしょうか。そうした考えから、私たちはターミナル内の店舗で働くスタッフを対象としたインバウンド対応研修に力を入れてきたのです。

高品質なおもてなしが求められる国際空港

小石峯様氏:TIATはお褒めと苦情の言葉の割合(褒詞率)に目標を置いて品質向上に取り組んでおり、年に2回モニタリングを実施し、その結果を国に報告しています。さらに、館内の至るところにお客さまの声を集めるためのご意見箱を設置し、専門部署で毎日集計して分析しています。

現在は週70件程度が寄せられ、月1回のCS会議で社長に共有するとともに、店舗の研修にも活かしています。お客さまの期待に応えられる高い水準の接客レベルを目指すためには、100を超えるさまざまな店舗で働く約2,000人のスタッフがおもてなしの水準を統一することが必要です。そのために店舗研修が重要な役割を果たしてきたと考えています。

忙しさの中で研修の受講がままならない店舗も

開業当初は注目度が高く、航空機をご利用でないお客さまも数多く来場されたので、忙しさの中でスタッフが対応に追われて、お客さまのご期待に沿えないこともありました。現在、空港利用率は開業時の2倍に増えましたが、店舗スタッフの数は2倍になっているわけではなく、店舗は人手不足で忙しい状態が続いています。そのような状況でも、おもてなしの水準を上げたいと、さまざまな研修を企画してきましたが「受講のためにスタッフが不在になると現場に負担がかかる」「忙しくて研修に参加できない」という店舗からの声も上がっていました。

外国籍スタッフが活躍する一方 異文化間の摩擦が顕在化

海外からのお客さまの増加に対応して、それらの言語ができる外国籍スタッフを積極的に採用する店舗も増えてきました。サービスの幅は広がりますが、一方で日本人のお客さまから「日本語や日本らしい接客がきちんとできていない」とご指摘をいただくこともあり、大きな課題でした。また、外国籍スタッフと日本人スタッフの間で、文化の違いから店舗や休憩室などで摩擦が起きるなどの問題にも頭を悩ませていました。

多様な階層・国籍・スキルレベルの人材に研修による全方位的なアプローチ

そうした課題がある中、国際線ターミナル全体でのサービスレベルを向上させるために2010年開業当時から6年連続で、インバウンド対応研修をパソナHRソリューションに委託しています。委託をした最初の年には、パソナHRソリューションにも独自にモニタリングをしてもらい、それをもとに研修の提案をいただきました。そこに私たちの希望を織り交ぜて、プログラムを拡充しながら現在に至っています。

おもてなし水準を底上げする「全館統一おもてなしセミナー」

各ホテルからの代表者が集まったので、他のホテルとのノウハウの共有というか、良い意味での競争、あるいは刺激し合える相乗効果が生まれました。これまでリッチモンドホテル内で認定制度なるものはありませんでしたが、認定するという部分でもひとつのゴールが見えたと思います。各ホテルの代表者10名が集まって研修を受講し最後の認定試験合格に向けて、同じ方向に向かっていく姿は初めて見たように思います。最終的には本人たちの成長はもちろん、お客さまにも喜んでいただき、結果それが会社に戻ってくるという、この認定制度により良い循環が生まれたと感じました。

接客場面に特化した語学研修

山本氏:接客場面に特化した「おもてなしランゲージ」*3 研修を英語、中国語、韓国語、日本語の4カ国語で開催しています。対象者は日本人スタッフのみならず、外国籍スタッフもおり、おもてなしの心が伝わる丁寧な日本語を学んでもらっています。また、2時間という限られた研修時間がより効果的になるように、対象者の語学力に合わせて、初級、中級、上級と複数コースを用意しています。

個々の店舗の実情に合わせた英語の現場指導

上級の英語研修では、ネイティブの講師によるロールプレイングを行います。しかし、空港の制限エリア内で開催する研修では、実際の商品を持ち出して指し示して説明することができないため、ロールプレイングがやりにくいという課題がありました。一方、店舗のほうでも、英語研修に複数名を参加させたいものの、仕事の都合で一人スタッフが抜けられるのも困るという状況でした。

そこで2016年から、講師が店舗を訪れて現場指導を行う形式を導入しました。集合研修の場では、店舗特有の商品については質問しにくいですが、現場指導でなら訊きやすいと好評です。店舗独自に作成している指さしシートの表現についても、英語表現が適切なのか、受講者から質問があれば改善点を指摘してもらうようにしています。

研修運営支援システム導入で研修の集客効率がアップ

パソナHRソリューションが提供しているシステム「SAKUTES(サクテス)」*4を導入したことにより、研修運営業務が効率化されています。以前は店長会議で研修内容を説明し、各研修の申込書に記入してFAXで返送してもらい、Excelで入力し直すという作業を行っていました。応募が少なければ店舗に出向いて参加を呼びかけることもあり、大変な手間でした。このシステムの導入によって、リマインドメールで案内や追加の応募を促すことができるようになり、効率がアップしています。

人材育成の継続により世界に通用するサービスレベルを実現

英国SKYTRAX社「Global Airport Ranking|5STAR AIRPORT」獲得

SKYTRAXの「Global Airport Ranking」で羽田空港が3年連続「5スターエアポート」を獲得できたのは、開業以来取り組んできた研修の成果の一つと言えるでしょう。「World’s Best Airports 2017」では、昨年の4位から大きく順位を上げ世界第2位を受賞し、年々ランキングの順位が上がっています。寄せられるお客さまの声も、語学面や外国籍スタッフの対応面のお褒めのお言葉などが中心となり、またモニタリングの平均点も年々向上しています。

こうした外部の評価だけでなく、店舗側の意識も変わり始めています。研修に参加することで他の店舗のスタッフと知り合い、横のつながりが生まれているようです。

また、店長が研修に対して前向きになり、スタッフを研修に参加させる体制を整えたり、積極的な問い合わせも増えてきたりしています。

成功の要因は求められるレベルと現場のニーズのきめ細やかな把握

古藤氏:このように研修が成果を上げているのは、お客さまや現場のニーズを「把握・分析」し、それをもとに研修を「立案」して「実施」し、モニタリングやお客さまの声から成果を「確認」するという、PDCAのサイクルがしっかりとまわっているからだと感じています。英語の現場指導形式の導入や、外国籍スタッフの日本語教育、異文化理解などはその一例です。

また、スタッフが研修に参加しやすい環境づくりにも力を入れてきました。24時間のシフト制で運営している店舗もあるため、開業当初は研修開催時間帯に幅を設けてクラス数を増やし「とにかく参加できる人を出してほしい」とお願いしてきましたが、次第に集まりやすい時間が決まってきました。

このため現在は、時間帯は15~17時の2時間に絞り込んでいます。前半・後半のシフト入れ替えのタイミングでもあり、一人が研修に参加しても現場に負担がかかりづらいなどのメリットがあります。

パソナHRソリューションを選んだ理由

さまざまな業界での研修実績と第三者からの評価

開業時、研修を依頼することを決定した際は、パソナHRソリューションの前身であるJALアカデミーとしてでした。JAL系の企業であり、空港という場所の特殊性について深く理解しているというのが決め手でした。
空港には、制限エリアや入場の仕方、パスの管理、持ち込み制限など、さまざまな特殊ルールが存在しています。また、街中の商業施設にはお客さまが目的を持って来店しますが、空港における店舗は「通り過ぎる場所」になりがちです。店舗をただ通るだけであったり、搭乗までの限られた時間で買い物や食事を済ませたかったり、お客さまごとに事情が異なります。
そういった忙しい中での接客方法を、JALアカデミーなら理解した上で指導してくれるだろうという安心感がありました。また接客のみならず、語学研修やモニタリング調査の提案があり、幅広く対応できることも魅力のひとつでした。

現在は、インバウンドに特化している研修はすべてパソナに依頼しています。

今後の展開について

空港という場所ならではの課題やニーズを研修に反映

各種語学研修の際には、よく使う基本フレーズをテキストに記載して「毎日店舗で練習しましょう」と伝えています。朝礼などで練習してもらいたいのですが、24時間営業の店舗やお客さまに見られずに練習できる空間のない店舗では、声を出しての練習は難しいもの。普段の仕事の中で実践を通じて上達し、応用するしかない面もあります。

今後は、各スタッフのレベルに合わせたスキルアップを実現していきたいと考えています。空港という場所柄、「英語を勉強したい、語学力を活かして仕事をしたい」という思いから就業するスタッフも多いのですが、接客英語は日常会話とは別物です。語学力を持つスタッフが、さらに自在に接客語学を使えるように、マンツーマンの個別指導なども導入できればと思います。現在、羽田空港国際線旅客ターミナル内にパソナHRソリューションのオフィスが開設(※2017年当時)されているので、困ったことがあればいつでもそこに常駐する講師に質問に行ける、いつでもレッスンが受けられるという状態になれば、さまざまなレベルのスタッフに対応できるようになるのではないかと考えています。

人材育成のビジョンを定め、より効果的な運営を目指す

私たちTIATはターミナルの運営と将来設計を考え、ビジョンを示す役割を担っています。例えば「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、もっと語学力やおもてなし力を引き上げたい」などの目標を定め、日本空港ビルデングに提案や実行をしていただく立場です。

このため、研修全体の要点を絞り、ポイントを定めるのは、TIATの重要な役割だと認識しています。空港の中にはたくさんの店舗があり、お客さまも多様です。そのような状況では、私たちが知識を上から下ろす形ではなく、現場の問題点を吸い上げて解消していくようなプログラムを提供していかなければならないと感じています。

「WE ARE TOKYO」世界No.1空港を目指す!

現在進めているブランディング・プロジェクト「WE ARE TOKYO」は、「羽田空港ブランド」のあり方をターミナルで働くすべての従業員に浸透させることを目的としています。

2020年に向けて、日本の玄関口として海外からのお客さまを迎えるにふさわしい空港を目指し、従業員通路にメッセージやイメージ写真を掲示したり、参加型イベントやワークショップ等を開催したりするなどの施策を通じて、従業員の一体感醸成やコミュニケーションの活性化が進んでいると感じます。

こうした取り組みで着実にステップアップを重ね、将来的には世界No.1の空港を目指していきたいと考えています。

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