5分で理解できる、働き方改革で変わる残業時間の上限規制ポイントとは?

働き方改革関連法案の目玉となっている「時間外労働の上限規制」。 

2020年4月から大企業だけでなく、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。 

それに対し、従業員の労務管理や業務の見直しなど、すでに様々な対策を講じられている経営者・ご担当者の方もいらっしゃると思います。 

一方で、今回の法改正について、なぜ規制が必要なのか、どのような変化があるのか、など具体的に内容を把握できていない方も多いのではないでしょうか。 
また、「残業代が減るのは困る」「持ち帰りの仕事が増えるのではないか」と、不安を抱える方も少なくないでしょう。 

お察しの通り、単に残業時間を減らすだけでは、働き方改革を成功させることはできません。 
時間外労働が減ることによるメリットを享受するためには、労働環境の改善と従業員側の意識を変えることが必要です。 

本記事では、働き方改革による残業の上限規制で何が変わるのか、そして自社で残業時間を管理する際の注意点やポイント、そして残業代を従業員に還元する3つの方法について、具体的に紹介していきます。 

 

働き方関連法改正により、上限規制はどう変わる?

 

時間外労働時間については、これまでも上限が定められていましたが、法的な拘束力はありませんでした。しかし、これからは違います。 

まずここでは、働き方関連法が変わることにより、残業時間の上限規制がどのように変わるのかを確認していきます。 

 

うやむやになっていた残業上限規制問題にメスが入った 

 

先ほど述べたとおり、時間外労働については改正前も「原則45時間/月、360時間/年」と上限が定められていました。 
これは1日2時間程度の残業になります。これまではこの上限を超えても企業に行政指導が入るのみで、罰則はありませんでした。 

この、実質上限時間はあってないようなもの、という状態を是正すべく設けられたのが、働き方改革関連法による規制です。 

 

改正後の違反企業は、罰金または懲役の可能性も 

 

改正後の残業時間も、「原則 45時間/月、360時間/年」と基本的には変わりませんが、大きく変更となるのは下記の3点です。 

  • 繁忙期などの特別な事情がある場合も「最大で100時間未満/月、720時間以内/年(複数月の場合平均80時間以内)」の労働までしか許可されない 

  • 月45時間を超える時間外労働が許されるのは、年間6ヵ月まで 

  • 上限を超えた場合、企業に罰則が課せられる 

これらを違反した場合、事業主に30万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役が科される可能性があります。 

※出典元:厚生労働省 働き方改革特設サイト|時間外労働の上限規制 

規制の対象となる法定時間外労働の定義を解説 

次に、上限規制にかかる残業時間の考え方を解説します。 

時間外労働には「所定時間外労働」と「法定時間外労働」があります。 

どちらの労働時間が超えても「残業」とは呼ばれていますが、規制の対象となるのは、法定時間外労働です。 

 

所定時間外労働 

企業ごとの就業規則などで定められた所定時間を超えた労働時間のこと。 

就業規則で勤務時間が9時から17時と決められているならば、17時以降は所定時間外労働の残業時間となります。

 

法定時間外労働 

法定時間外労働は、企業のルールと関係なく、労働基準法で定められた労働時間(8時間/日、40時間/週)を超えた労働時間のことを指します。 

法律上はこちらの残業時間を用いるので、今回の法改正による残業時間の上限規制においても、法定時間外労働の時間がポイントとなります。 

 

企業規模によって異なる時間外労働時間の上限規制 

2018年6月に成立した働き方改革法案ですが、改正法の適用時期は、企業の規模によって異なります。 

大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月1日から適用されます。今後は、中小企業においても、労働時間に関する対応が求められます。 

なお、国が定めている中小企業の定義は業種ごとに異なり、資本金または労働者数のどちらか一方を満たすことで該当します。 

 

 業種 

資本金 

労働者数 

小売業 

5,000万円以下 

50人以下 

サービス業 

5,000万円以下

100人以下

卸売業 

1億円以下 

100人以下 

その他(製造業・建設業など) 

3億円以下 

300人以下 

 


2024年まで法適用が猶予される業種も 

今回の法改正では、「医師」「自動車運転業務」「建設事業」など、時間外労働時間の上限の施行が2024年まで猶予される業種もあります。 

一定期間の猶予ののち、その業種に合った規制が適用されます。  

※出典元:厚生労働省|働き方改革特設サイト 上限規制の適用が5年間猶予される事業・業務 

また今回の法改正に伴い、労働安全衛生法が改正されたことにより、新技術・新商品等の研究開発業務については、新たな規制が定められました。 

新技術・新商品等の研究開発業務については、上記の残業時間の上限規制から除外され、次のような規制が設けられます。 

  • 1週間当たり40時間を超えて労働した時間が、月100時間を超えた労働者に対して、医師の面接指導を義務化(罰則付き) 

  • 面接指導を行った医師が必要と認める場合は、事業者が何らかの措置を講じなければならない 

     

     

残業時間の上限規制で起こりうる問題 

残業時間の上限規制を行うのみでは、根本的な課題解決にはなりません。もし他の対策を講じなかった場合、どのような問題が起こると考えられるでしょうか。 

 

残業代をアテにしていた従業員のモチベーションの低下 

残業が少なくなれば、家族と過ごす時間や趣味に費やす時間が増える一方で、残業代は減額してしまいます。 

今まで家計を残業代に頼ってきた家庭においては、ローンや子どもの教育費を払えない、という事態もあり得ます。 

これまでの生活が維持できなければ、転職を考えなくてはならない場合もあるでしょう。 

仕事の持ち帰りやサービス残業の増加も懸念されるなか、残業代だけが減り、仕事量が変わらないのでは、労働意欲も低下してしまう可能性があります。 

 

リソースが少なくなることによる管理職への負担のしわ寄せ 

管理職の負担についても配慮が必要です。 

時間外労働時間の上限厳守を強制された管理職は、時間内に終わらなかった仕事を巻き取ることになり、仕事持ち帰りや休日出勤が増える可能性も考えられます。

 

働く時間を強制的に減らすことで離職率が減るリスクも 

管理職含め、従業員が仕事への意欲をなくすことで一番困るのは企業です。 

大切な従業員の離職は、企業にとって大きなダメージとなります。 

残業代が減れば企業の一時的な支出は減るでしょう。しかし、経営層はそれをゴールにしてはいけません。一時的に削減したコストを有効活用し、従業員の働く意欲を下げないための対策を考える必要があります。 

 

従業員のメリットを提示して、正しい残業規制をすることが大切 

そもそも残業規制の本質とは何でしょうか。 
 
時間外労働を規制する本来の目的は、生産性を向上させ、働き手を増やすことにあります。 

働きやすい環境を整えることで、結果として企業の利益に繋がるのです。 

先ほども述べたように、「労働時間の短縮」を従業員へ無理強いするだけでは、本来の目的は果たせません。 

新たなツールの導入や、業務の一部外注を検討したり、取引環境の改善などといった環境の整備も必要です。 

そして、これらに加えて必要不可欠なのが、メリットの明確化です。 

時間外労働の規制が始まっても、収入は変わりません。一方で余暇が増えるのでワークライフバランスをより充実できるなど、従業員に対するメリットをあらかじめ提示しましょう。 

そのためには、残業規制により削減したコストを従業員のために還元することが大切です。 

従業員がしっかりとメリットを理解できていれば、新しい働き方に対しても前向きに取り組む社内風土をつくることができるでしょう。 

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